デンツプライシロナ主催インプラントサミットでの講演を終えて
4 月に東京で開催されたデンツプライシロナインプラントサミットにて招待講演を行なってきました。300 名程度の参加で東京の新橋本社の特別会場で開催されました。イタリアからマルコトーヤ先生、アメリカのネブラスカ州から宮本貴成先生が来日し、同じセッションでインプラント治療を成功に導く勘所をメインにお話しさせて頂きました。
今回の大会テーマとしてはデジタルデンティストリーが全面的に押し出された感じでした。まさに世界の潮流で、北米の臨床大学院でも積極的に教育カリキュラムに含まれており、今やデジタルなしでは時代遅れ的な扱いにされるでしょう。
私が南カリフォルニア大学歯学部臨床大学院時代はガイドサージェリーが出始めた頃で卒業するまで 1 症例ほど行えば合格みたいな扱いでした。臨床大学院を卒業してから 10 年経過した現在、ガイドサージェリーもだいぶ進化しほぼ 100% に近いくらい、大学院生はインプラント埋入する際に用いております。卒後もほとんどの先生方がガイドサージェリーを行ってるのが現実かと思います。テクロジーの進化は素晴らしく、インプラント埋入位置の正確性はガイドが普及する前の過去と比較してだいぶ向上したでしょう。昔はインプラントの位置がだいぶ外れてる術者とかいましたね。。。現在では、サージカルステントを用いたインプラント埋入してもフリーハンドと呼称する様で。。。私は今でもサージカルステントを用いたインプラント埋入を行うことがあります。骨増生後に CBCT で骨を確認するが、予想以下の骨質で造成部が喪失してしまうこともあります。この様な症例ではインプラントプランニングを行なってガイドを作成しても使い物になりません。サージカルステントを用いて適切な埋入位置を臨機応変に決定することができますよね。
今回の講演でも話しましたが、昔は経験や知識ある先生方のインプラント治療の成績が経験も知識もない先生方よりも確実に結果が良かったです。現在は経験がある術者とない術者で比較した際にインプラント埋入位置に関してはそこまで大きな差が出てこないでしょう。
しかし、大きな落とし穴を教育指導してる身分として痛感することがあります。
思考力です。
あまりにも便利なものが出来上がってしまったために、知識や経験がない術者も”できてる感”が出てしまうことです。他の言葉で言い換えるのであれば、間違いが起きてることに気づいていない、説明書に沿って治療を行なってるのだが予想通りにいかない、、、その場合のトラブルシューティングができずにお手上げになってしまう大学院生や臨床家が多くなってることです。
大きな問題です。
診断用ワックスアップもアナログからデジタルに変化し便利になりましたが、診断用ワックスアップも経験したことがない補綴医がデジタルワックスアップを行なっても芸術的な手指感覚を生かした仕事は不可能です。
アナログでできなかったことをデジタルで補いより完成度を高くしていくことが理想的です。ただ、現在の教育傾向を観察すると、アナログは面倒だからやらない傾向はあります。まずは手を使ってモノ作りをすることでアナログの長所と短所も学ぶことができるのですが、食わず嫌いでは学ぶ機会を得ることも不可能です。
デジタルが発達し歯科治療結果の標準誤差が狭くなることは社会的にも良いことですが、マスタークリニシャンである達人が世に出てくる機会を減らしていくだろうと感じております。
デジタルの素晴らしさを感じてもらうために、まずはアナログの世界を勉強してほしいですね。